「社会学の発想」のために1

再び知的財産権について。
3日前の記事でとりあげた「北京モーター・ショー」の話、社会学を学ぶ以上、ただの笑い話として片づるわけにはいかない。思考訓練に格好のもうひとつのエピソードをあげておく。

南アフリカエイズ危機が起きた。アメリカのエイズ薬は余りにも高かったので、アフリカでは、それを買える人はほとんどいなかった。
そこで南アフリカ政府は言った。「私たちは、アメリカの抗レトルウィルス薬と同じ成分の薬を、それよりずっと安い値段で手に入れるつもりだ。」その薬を作る方法を解明したインドの製薬会社を見つけたからだ。
特許を尊重しなければはるかに少ない金額で、大勢の人の命を救うことができるのだ。
するとアメリカ政府は言った。「それはダメだ。研究に投資しこの薬を作り出した会社はどうなる。ライセンス料を払わずに勝手に薬の大量生産をすることは許されない。」そうして論争が起きた。
その製薬会社は南アフリカ政府を訴え、より安い彼らが海賊版と考えるエイズ薬を南アフリカ政府が買おうとするのを防ごうとした。
この件は、最終的にはアメリカの製薬会社が折れて、解決することになる。
マイケル・サンデルの「ハーバード白熱教室」第4回「この土地は誰のもの?」2010.4.25.NHK)

(この番組が「面白い」と教えてくれた院生さんに感謝。)

なぜ、薬がセーフで車がアウトなのか?

参考◇

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

次回、社会学入門、社会学概論は、テキスト第二章「社会学の発想」