備忘追記:ラウル・デュフィ展雑感
ラウル・デュフィ展の印象を短く言うならば「アーティスト/アルティザン」ということになろうか。
資料等によれば、デュフィは美術史上フォーヴィズムに分類される画家だが、フォーヴィズム作家としての活動はほんの数年間に過ぎない。75年にわたる生涯で、30代の半ばにはすでにフォーヴィズムの様式を離れている。この絵画展でも圧巻なのは、後半生に描かれた軽快な水彩画の数々だ。その画風に決定的な影響を与えたのが、ファッション・デザイナーやシルク製造業者との出会いによるテキスタイルデザインであり、商業イラストという新領域だった。アーティストの才能と、商業デザインの仕事が、相乗効果をもたらし彼の画業を形づくっていることが展示を見るとよくわかる。
このことは彼が生きた時代の「メディア状況」と密接に結びついている。あるいは彼の芸術そのものが商業メディアとして社会的に拡大機能したと言ってよいだろう。
今週の<メディア文化論>の主題は「メディアとは何か」でした。テキスト『現代メディア史』冒頭を参考のこと。
また、見るものを快くする作品の創造、という彼の信条も印象に残った。何気ないことのようでいて深い。これは同時代の芸術至上主義的一派(および彼らの、なにやら強烈だが、醜悪だったり不可解だったりするばかりの作品群)に対する強烈なアンチ宣言でもあり、当代を生きたアルティザン/アーティストとしての自負でもあろう。
参考図書。
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