ルビという文化
今日、彼岸明け。ふと、漱石の『彼岸過迄』を読みたくなるが、仕事山積状態で禁欲。
そういえば、土曜夜、旧友と歓談中に夏目漱石賛になった。昨今の一部大学生には、注釈無しに読み進むことも困難な「古典」となってしまったが、我々世代にとっては青春の愛読書。特に短編は凄い、何より文章がいい、しかも新しい、というあたりで三人の意見が一致した。学生にも原文のまま味わってほしい。とりわけ、漱石の文にあるような「ルビ」の妙が、現在の日本ではすっかり失われてしまった、という話にもなった。
たとえば、同じ「服装」と書いても、≪なり≫と読ませたり≪つくり≫あるいは≪いでたち≫とを読ませたりする。ルビひとつで文章が俄然変わる。停車場は≪ステーション≫とハイカラ読みだ。一語一語の日本語のふくらみが違う。
ルビという日本語文化の再興のため、紙面「総ルビ」化を断行する新聞社が出現することを切望する。文化や教養云々の社説論説を千万掲載するよりも、その意義ははるかに大きいだろう。
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1990/04/16
- メディア: 文庫
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (19件) を見る