とてつもない売れ行き

本屋に行き、本を買う、という快楽は、ニューメディアによって確実に解体されつつある。
自他ともに認める本の虫ですら、「本屋にいく回数が激減した」と言う。新書も古書もネットで購入するほうが手軽だからだ。それでも「紙でできた本」を愛する若者がなお存在していることは下にもふれたが、おおかたの大学生が本を買わなくなって久しい。テキスト指定した本ですらできれば買わずにすませようとする猛者もいる。
ある編集者によると「今、本を買うのは団塊の世代とオタク」だという。このことばの半分を実証するかのような事態が10日出来した。
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090311/bks0903111624000-n1.htm
2007年刊の首相の著書が、突如、全国で爆発的に売れるという「珍現象」がおこったのだ。匿名掲示板での呼びかけによる、いわゆる「祭」現象である。今朝のフジTVでは、この呼びかけに応じて4冊もこの本を購入した女性のインタヴューが流れていた。「参加」の喜びだと彼女は言った。「本屋に行き、本を買う」という行動によって、生身の現実として「参加」が味わえる。
まさに「祭」である。政治が本来「まつりごと」であったことを思わずにはいられない。
これはG・L・モッセが『大衆の国民化』で「新しい政治」と呼んだものでもある。

とてつもない日本 (新潮新書)

とてつもない日本 (新潮新書)

↑3月13日9:40am現在、amazon「ベストセラー」第一位。