子を縛る

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古今東西の子供イメージを縦横に見せてくれたルーヴル展。ふと「おくるみ」のことが気になり、帰宅後なんとなく調べているのだが、何がどう紛れたか、出典がなかなか見つからない。
こんな解釈をずっと信じてきたのだが。


絵画彫刻などに描かれているヨーロッパ中世の「おくるみ」姿の新生児は、顔だけ出していて、あとは手足ともにぐるぐる巻きにされている。さながら「みのむし」もしくは「たらこキューピー」、巻かれている部分は「ミイラ」だ。足の爪先に向う程に細く縛り上げられている様は、顔のサイズから見ても異様な迄きつく、ほとんど「緊縛」の域に入る。しばしば子供の表情も物憂げだったり苦しげだったりする。
なぜ縛るのか?
かつて北ヨーロッパでは子供のクル病の発症率が非常に高かった。栄養と日照の不足による骨格異常の病だが、その原因が解明される以前、子供の手足をなんとかまっすぐ育てようと、まだ身体の柔らかいうちから骨を矯正するためこの「緊縛」おくるみが生まれたのだという。
ちなみに、ぐるぐる巻きにされた赤ん坊を、必要に応じて壁のくいに「ひょい」と掛けて置くこともできた。埃もかからず、狼にもくわえて行かれないのがメリットとか。



という話を、一体どこで読んだか、あるいは人から聞いたのか。信頼できる出典をご存知の方、是非ご教示下さい。いわゆる俗説なのかもしれませんが。
ともあれ、緊縛状態の新生児の絵画彫刻を見るたびに、
『ああ、親というものは「良かれ」と思って、子供をかくも「縛ってしまう」ものなのだなぁ』
と、せつなく思う。乳幼児期からの緊縛は「纏足」にも一脈通じるが、その動機は欲望というより只管子の健康を願う親心なのだ。無論、アリエスにしたがうならば、それは近代的な「愛」や「可愛がり」とは又別種の心情ということになるわけだが。

(むずかる新生児を静かにさせる為ぐるぐる巻きにきつく包むのが効果的、という説もあるようだ。窮屈な子宮の中のような、あるいは抱きしめられているような安心感が得られるためだろう。それはそれでわかる気がする。)



画像は、激しく季節はずれながら、ドイツの冬の風物詩・クリスマス菓子「クリスト・シュトーレン」。幼子イエズスの「おくるみ」姿を模したものと言われている。


◇◆◇◆◇2009.8.17.追記
weblog読者様からの報告によると、パキスタン、そしてタイでも新生児を「縛る」そうです。パキスタンの方の説明によると、「モロー反応」防止のため、とか。貴重な情報提供に心より感謝申し上げます。
私自身の知るところでは、中国でも赤ん坊を「縛って」います。「おくるみ」でくるんだ上からぐるぐると「ひも」をかけておりました。
どうやら多数の国に共通する習慣のようです。